メタボリックシンドロームという言葉もいまや、すっかり定着した感があります。
この言葉が知られるようになったのは、平成18年の5月8日、厚生労働省が発表した調査結果がはじまりです。
この調査結果は平成16年国民健康と栄養調査のうち無作為に選ばれた20歳以上の男女およそ三千九百人の血液検査を、はじめてメタボリックシンドロームという概念を用いて分析したものでした。
その結果たるや、若年層はそれほどでもないですが、中年以降に位置づけられる40歳から74歳の年代になると、予備軍を含めると男性51.7%、女性は19.6%という高いパーセンテージを示していました。
厚生労働省は、高齢化社会へまっしぐらに向かっている日本の状況を見据えて、2000年以降、「健康日本21」運動にとりくみはしていたのですが、生活習慣病の比率は減るどころか拡大し、それにともなって医療費増大にも拍車がかかっていました。
そこで、生活習慣病を予防するためによりわかりやすいガイドラインを、ということで設けられたのがメタボリックシンドロームの診断基準なのです。
2005年4月に内科系八学会である、日本肥満学会、日本糖尿病学会、日本血栓止血学会、日本動脈硬化学会、日本循環器学会、日本内科学会、日本高血圧学会、日本腎臓学会が結集し、作成されました。
メタボリックシンドロームとは、内蔵の周囲に脂肪が蓄積する、いわゆる内臓脂肪蓄積型の肥満の条件をもち、かつ、高血圧、高血糖、脂質異常といった危険因子を二つ以上もってしまった身体の状況のことをあらわします。
肥満の基準としては、腹囲ウエストが男性は、85センチ以上、女性は90センチ以上と設定されています。
こうした時勢を受けて、いよいよ来春の2008年から企業や教職員の健康診断の際に、いわゆるメタボチェックとして「ウエストサイズを測る」という項目が厚生労働省から義務付けられることになりました。
マスコミも、厚生労働省の後援を受けて、メタボリックシンドローム撲滅委員会というものを立ち上げて、成人病予防のための情報を発信しています。
メタボリックシンドロームは、それ自体では、特に病気ということではなく、これから成人病になる可能性が高いということでしかありません。
そういう予防となると、なかなか行動しにくいものですが、このように、マスコミや健康診断などで、認知度が上がり、普段の生活から「メタボ」を意識するようになるのはとても有効といっていいでしょう。
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メタボリックシンドローム 対策
メタボリックシンドロームの対策として、生活習慣病の予防方法として、厚生労働省は、普段の日常生活に、健康のための運動を組み込むための指針となる「エクササイズガイド2006」を公開しています。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/undou01/pdf/data.pdf このエクササイズガイドは厚生労働省の運等指針小委員会がまとめたものです。
第一章が理論編、第二章が実践編となっており、それぞれのケースにあうよう具体的な事例とともにどうやって生活の中で運動をしていくかがわかりやすく解説されています。
このレポートの特長として、消費カロリーが各運動の目安として使用されていないことです。
これは、カロリー表示ですと、その人の体重によって、消費するカロリーが大幅に異なってくることが理由です。
カロリー表示のかわりに、メッツとエクササイズという単位が採用されています。
メッツとは、からだが運動を行っていく上での強度を表します。
安静にしている時と比べてどのくらいの強度がかかるかを示すので、基準となるのが、座って安静にしている時の状況になります。
これが1メッツとなり、普通歩行がそれにくらべて3倍の強度がかかるので3メッツとなります。
エクササイズという単位は、このメッツに対して、実施時間をかけたもので計算されます。
レポート内では、「健康づくりのための身体活動量として、週に23エクササイズ以上の活発な身体活動(運動・生活活動)を行い、そのうち4エクササイズ以上の活発な運動を行うことを目標」とするように冒頭にて、すすめていますが、その後の改定により、メタボリック改善のためには、週に10エクササイズ以上の運動量が必要と追記されました。
1エクササイズに相当する生活活動の例としては、普通歩行なら20分、階段の上り下りなら10分、床掃除なら20分といったところです。
1エクササイズに相当する運動の例としては、ランニングなら7〜8分、エアロビクスなら10分、ゴルフなら15分といった内容となります。
一週間単位でこなしたエクササイズを記録管理できる「身体活動量評価のためのチェックシート」がついていますので、これを印刷して活用していきたいところです。
メタボリックシンドローム 食事
メタボリックシンドロームを予防、そして改善していくためには、運動をして脂肪を燃焼させるか、食事内容を変えて行く、この二つしかありません。
メタボリックシンドローム撲滅のための旗頭を振る厚生労働省も農林水産省と一緒に設定した「食事バランスガイド」(平成17年6月)にて、望ましい食生活についてわかりやすくイラストで解説したものを公開しています。
ここで大事なのはやはりバランスです。
なにかに偏ることなく、満遍なく色々な品目の食品をほどよく食べることが強調されています。
腹八分目とよくいわれますが、おなか一杯になるまで食べるのは、やはり肥満への道への一番の近道となります。
食べすぎを防ぎながら、なおかつ空腹感を満たすためには、満腹中枢を刺激するような食べ方が有効です。
まずは、よくかんで咀嚼することです。
スローフードともいわれますが、早食いは肥満につながります。
時間との競争といえる現代社会において、ご飯に時間をとっていられないというのも分かりますが、結局、しっぺ返しを食うのは自分になるわけですから、一食一食、気をつけて食事を取りたいものです。
咀嚼回数は理想として、一口三十回ともいわれますが、そこまでするのは大変なので、気持ち意識して噛むように、そしてより味わうようにすれば、自然とゆっくりになります。
玄米を食べれば、白米ほど食べやすくないので、自然と咀嚼回数が増えます。
この「よくかむ」ことは、消化がよくなるということもありますが、まずは食事時間が長くなる、というところが特にポイントとなってきます。
それは、食事をすることで血糖値が上昇して、これが満腹中枢を刺激して食事の満足感を満たしてくれるのですが、この作用は起こるのにだいたい食事開始から20分かかるといわれています。
つまり食事は20分ほどかけることで、少ない食事でも満腹感を得られることができるのです。
ただ、この満腹中枢はストレスがあると、うまく働かなくなって、暴飲暴食、過食に走ることがありえます。
メタボ対策の両輪の一つとして、適度な運動を習慣がありますが、この適度な運動はストレス解消にもとても有効に働きます。
ですので、食事内容に気をつけるだけでなく、エクササイズも同時にやっていくことで、二つがうまくかみあい、健康な状態を維持できるようになります。